【文/Discover Taipei】
アツアツの麦芽糖を木型に入れ、職人がフーッと息を吹き込むと、型の中の麦芽糖が膨らみ、動物や鳥の形をした空洞の「吹糖」(飴細工)が完成します。子どもたちはその過程に見とれ、喜びながら飴細工をほおばります。また、そのそばにあるさまざまな「捏麵人」(小麦細工)も同様に子どもたちの人気を集めています。この吹糖と捏麵人のワザを受け継いで60年以上になるのが翁登賢で、台北市立兒童育樂中心でその実演体験の講師を務めています。
吹糖の起源と製法
伝統工芸の吹糖を大成させたのは、明朝の劉伯溫だと言われています。当時、明朝の初代皇帝となった朱元璋は、王位が代々スムーズに継承されるように官吏の弾圧を行いました。その時、軍師だった劉伯溫は、砂糖売りの老人に救われて難を逃れました。2人は互いの服を交換し、劉伯溫は素性を隠して暮らすようになったのです。その時に砂糖を温めて水飴状にする技術を開発し、さまざまな形の飴細工を作るようになりました。それが600年の歴史を経て今日まで伝承され続けてきたのです。
近代になると、吹糖の多くは、縁日や市のほか、祭りの際にしか見かけなくなりました。翁登賢は以前、歌仔戲(台湾オペラ)の劇団と行動を共にしていました。舞台で歌仔戲が演じられる際に、客席には吹糖などの子どもが喜ぶ屋台が集まり、子どもの注目を集めていました。翁登賢は、移動店舗のように、麦芽糖を温める道具や木型、ハサミなどの道具を入れた木箱とイスを担いで、吹糖を作っていました。今ならストリートパフォーマーにあたるでしょう。
翁登賢は、吹糖を作る際にとても気を使っています。まず、飴が木型にくっつかないように、木型と飴に片栗粉を付けています。そのままおやつとして吹糖が食べられるように、火を通す必要がない片栗粉を使っているのです。片栗粉を付けたら飴を丸めてへこみを作って木型に入れてフタをし、ストロー代わりになるようにファンを使って飴を伸ばしていきます。最後にそこから息を吹き込んで、木型の飴を膨らまして空洞状態にし、取り出して風に当てて固めます。
特に吹糖に使う麦芽糖は高級なもので、一般的な黄色のものと違って白っぽいです。この魅力的な吹糖は、見た目が美しいだけでなく、子ども心をくすぐります。「ここに実演体験に来た幼稚園児に息を吹き込ませるんだけど、たまにそのまま麦芽糖を口に入れてしまう子がいて、それがまた可愛いんだ」と翁師傅は笑います。
捏麵人の起源と製法
捏麵人の起源は三国時代の諸葛孔明と関わりがあると言われています。ある戦争が終わった帰路で、軍隊が川の増水に出くわしました。故郷に帰れない死んだ兵士の魂が川の増水を起こしていると考えた諸葛孔明は、料理人に小麦粉の皮で成人の頭を作らせ、いけにえとして祭ったところ、しばらくしたら川の水が引き、一行は川を渡ることができたのだといいます。
後に捏麵人は冠婚葬祭、廟の行事、祭の際の贈り物、供え物、鑑賞品として利用されるようになり、状況に合わせて福祿壽、八仙過海、三牲、山珍海味などが作られるようになりました。現在の捏麵人の多くは、紙粘土かパン粘土で作られていて、翁登賢だけが中力粉、もち米粉という伝統的な材料にこだわり続けています。ただ、以前の捏麵人は食べられましたが、現在は美しさを追求して添加物や合成着色料が使われているので、鑑賞するだけで食べられません。
60年を超える伝統工芸の道
吹糖と捏麵人のワザを受け継いで60年以上になる翁登賢の父親は、汐止の炭鉱作業員で、幼いときから学校を卒業してから役に立つ特技を何か身につけるように言われていました。小学校を卒業したある日、汐止区の農協の近くで吹糖の屋台を目にし、興味を持った翁登賢は、父親の友人の紹介で、電車に乗ってから三輪車に乗り換え、三重に住んでいる田師匠宅を訪れました。田師匠は、当初、吹糖では生計は成り立たないと弟子入りを拒み続けていましたが、翁登賢はそれでも諦めず、1,000元(旧台幣)の月謝を納め、木型を購入し、この伝統工芸の道を歩み始めました。18歳で弟子入りしてから吹糖を学び、79歳となった今でもそのワザを磨き続けています。
当時の1,000元といえば、台鐵(国鉄)の職員の4カ月分の給料にあたり、最初にその半分を学費として納めたそうです。入門当初はその難しさから、諦めようと思ったこともあるそうですが、そうしたら月謝が無駄になり、両親に申し訳ないと思いとどまり、頑張って学び続けたといいます。
田師匠に入門してワザを身につけた翁登賢は、艋舺龍山寺の彫刻家である廖師匠に入門し、さらに吹糖を学びました。廖師匠の細工はきめ細かく、翁登賢の腕にも磨きがかかってきました。その後、廖師匠の紹介で基隆の李金玉師匠に入門し、もうひとつの伝統工芸である捏麵人を学びました。それで翁登賢は台湾でも数少ない吹糖と捏麵人のワザを持つ職人になったのです。
現在、翁登賢は台北市立兒童育樂中心でその実演体験の講師を務めています。興味のある方は事前に電話予約して、貴重な台湾の伝統工芸のワザに触れてみてください。
関/連/情/報
台北市立兒童育樂中心
住所:台北市中山北路3段66号
電話:(02)2593-2211 内線322、323
開館時間:09:00~17:00(月曜日休館、ただし祝日は開館)
備考:翁登賢の実演体験は火曜日と木曜日
(要事前電話予約)
https://www.tcrc.taipei.gov.tw
※英文版:
‧Childhood Joys Recaptured at A Taiwan Temple Fair – Candy Blowing and Making Dough Figurines
【Discover Taipei 2013年11月號】
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